静岡県静岡市N邸の庭
玄関のドアを明けると
青々とした苔庭が広がる
既存のRCの壁を取り払い、中庭と主庭をつなげて空間を生かした
静岡市に建つ洋風住宅のN邸は、エントランス部分の曲線のラインが外観にも特徴的でした。しかし、その壁のために、玄関の正面にせっかく設けられた中庭には日差しが全く入らず、植物が育ちませんでした。また、庭とも分断され、両方を狭く見せていました。そこで、「すごく広くなるから、まかせて!」と奥さまを説得。既存のRCの壁を取払いました。
奥さまは、自分で苔を植えて育てるほどの苔好き。「落葉樹や苔の生き生きした庭に」と希望していました。そこで、株立ちのコハウチワカエデやオオモミジを植え、地面には苔を敷き詰めました。
使用した苔はジゴケやハイゴケです。スギゴケも最初はとてもきれいですが、地域によっては数年で枯れてしまいます。私は今までの経験から、とくに関東で育ちやすいと思う苔だけを使っています。
苔の場合、関東では乾燥が厳しいため、水やりはもちろん、落ち葉拾い、草取りなどの手入れが必要になります。そのため、苔を手入れする際に通れるように園路をつくり、苔を踏まずに手入れできるよう考慮しました。
隣家との境界には、目隠しのために、ウッドフェンスを設けました。植物の生育を考えて、フェンスの下は70㎝ほどあけて風通しをよくしてあります。
その分、常緑のアオキを植えてあるので、プライバシーは守られています。また、壁のあった部分には、黒いピンコロを2列に敷きました。そのため、建物の曲線のラインが、新しい庭にも生かされています。
一方、庭への入り口になる玄関から続くの庭は、借景となる洋風住宅に合わせて、洋風のデザインを取り入れました。園路にはイタリア斑岩のピンコロを使用。
立水栓がフォーカルポイントになっています。趣の異なるふたつの庭は、木製のフェンスで仕切りました。
外から眺めると洋風住宅に似合う洋風の庭、ひとたび、玄関を入ると目の前の窓から、広々とした苔の庭が眺められます。和と洋のふたつの庭が、家と庭との一体感を高めています。